バブル発電機



(54)【発明の名称】気泡を利用した回転機構を備える発電機

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡の浮力を利用する回転機構を備えた発電機であって、前記回転機構は、液体を貯めた容器と、前記液体に前記気泡を供給する気泡供給管と、前記容器の中央部で前記液体中を上下動する、前記気泡の通過口を備える円盤状の錘体と、前記錘体の上部に重ねられ状態で前記通過口を閉じ、前記錘体から離間した状態で前記通過口を開く円板と、前記錘体の側部に一端が係止されて、前記錘体から放射状に伸び、他端が前記容器の内面に係止されている折り曲げ可能な複数本の支持棒体と、前記支持棒体に支持されて前記液体中にパラシュート状に拡がり、中心に設けられた中心孔の周縁が前記錘体に固定されているシート部材と、前記錘体の上下動を前記容器の外部に導出する第一リンク部材と、を有し、前記発電機の回転軸が、前記第一リンク部材を含むリンク機構を介して回転される、発電機。
【請求項2】
請求項1に記載の発電機であって、前記錘体は、前記気泡供給管から供給された前記気泡が、前記シート部材の中央部に集まり、前記気泡の浮力が所定値以上に高まったときに上昇し、上昇した前記錘体から前記円板が離間して、そのために、前記錘体の前記通過口から前記気泡が通過し、前記気泡の浮力が所定値以下に低下したときに下降する、発電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電機であって、前記容器中に、前記錘体及び前記円板の移動方向を規制する支柱と、前記支柱に固定されて、前記錘体及び前記円板の上昇位置を既定する停止板と、が配置され、前記停止板は、下方に突出する停止棒を備え、前記停止棒の貫通孔を有する前記円板は前記停止板に接触するまで上昇し、前記停止棒の貫通孔を持たない前記錘体は、前記停止棒の先端に接触するまで上昇する、発電機。
【請求項4】
請求項1に記載の発電機であって、前記支持棒体及び前記第一リンク部材は、長さを可変する長さ可変機構を有している、発電機。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の発電機であって、前記錘体と前記円板とは、引力を作用するスプリングで接続されている、発電機。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の発電機であって、前記シート部材の外周縁近傍の部分に液体の通過孔が設けられている、発電機。
【請求項7】
請求項1に記載の発電機であって、前記リンク機構が、揺動運動を回転運動に変換する機能を有している、発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
[0001]
本発明は、気泡を利用した回転機構により回転される発電機に関する。
【背景技術】
[0002]
発電機は、導線を巻いて形成したコイルと磁石とを近接配置し、コイルに対して磁石を回転させ、又は、磁石に対してコイルを回転させることで、コイルに誘導電流を生じさせ発電を行っている。
このように、コイルに鎖交する磁束が時間的に変化する場合に、コイルに起電力が発生する。
[0003]
従来の発電機では、コイル又は磁石を回転させるために、ガスや蒸気のタービンで発電機の回転軸を高速回転させたり、水車で前記回転軸を低速回転させたり、風車により前記回転軸を駆動したりしている(下記特許文献1)。
[0004]
しかし、風力や水力等の自然エネルギを利用する場合は、自然エネルギの安定的な確保が可能な場所を探すことが困難であり、また、ガスや蒸気を利用する場合は、化石燃料等からそれらを得るまでの過程に様々な課題を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
[0005]
【特許文献1】特開2020-188605号公報【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
[0006]
本発明は、簡便な回転機構を用いて回転させる発電機を提供することを目的としている【課題を解決するための手段】
[0007]
本発明は、気泡の浮力を利用する回転機構を備えた発電機であって、前記回転機構は、液体を貯めた容器と、この液体に気泡を供給する気泡供給管と、容器の中央部で液体中を上下動する、前記気泡の通過口を備える円盤状の錘体と、この錘体の上部に重ねられ状態で前記通過口を閉じ、この錘体から離間した状態で前記通過口を開く円板と、体の側部に一端が係止されて、錘体から放射状に伸び、他端が容器の内面に係止されている、折り曲げ可能な複数本の支持棒体と、この支持棒体に支持されて液体中にパラシュート状に拡がり、その中心に設けられた中心孔の周縁が錘体に固定されているシート部材と、錘体の上下動を容器の外部に導出する第一リンク部材と、を有し、発電機の回転軸が、前記第一リンク部材を含むリンク機構を介して回転される構造を備えている。
[0008]
この回転機構では、液体中に供給された気泡が、シート部材により中央に集められる。
気泡の浮力が所定値を超えると、錘体とそれに重ねられた円板とが上昇し、それに伴い、錘体に連なる支持棒体及びシート部材の中央部分が引き上げられる。体の上昇が抑えられても、円板は、錘体の気泡通過口から気泡の浮力を受けるので、更に上昇する。それに伴い、気泡通過口が解放され、そこを伝って気泡が散逸する。そのため、気泡の浮力を失った錘体及び円板は共に下降して、錘体の気泡通過口を円板が閉じる状態に戻る。錘体及び円板は、こうした一連の動作を繰り返す。
[0009]
また、本発明では、前記容器中に、錘体及び円板の移動方向を規制する支柱と、この支柱に固定されて、錐体及び円板の上昇位置を既定する停止板と、が配置され、この停止板は下方に突出する停止棒を備えており、停止棒の貫通孔を有する円板は、停止板に接触するまで上昇し、停止棒の貫通孔を持たない錘体は、停止棒の先端に接触するまで上昇する。

そのため、錘体及び円板が、気泡の浮力を受けて上昇したとき、錘体から円板が離れて錘体の通過口から気泡が通り抜ける。
[0010]
また、前記支持棒体及び第一リンク部材は、長さを可変する長さ可変機構を有しているそのため、錘体の上昇及び下降が円滑に行われる。
[0011]
また、本発明では、鍵体と円板は、引力を作用するスプリングで接続されていることが望ましい。
このスプリングの作用により、体の下降時に、円板は、体に素早く重なり、錐体の気泡通過口を閉じる。
[0012]
また、本発明では、前記シート部材の外周縁近傍の部分に液体の通過孔が設けられていることが望ましい。
この液体通過口が存在すると、体の上下動に伴ってシート部材が動くとき、液体から受ける抵抗が少なくなる。
[0013]
また、本発明では、前記リンク機構が、揺動運動を回転運動に変換する機能を有している。
【発明の効果】
[0014]
本発明により、簡便な回転機構を用いて発電機を回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
[0015]
【図1】本発明の実施例の形状(回転機構の錘体が下方位置にある状態)を示す図。
【図2】図1の錘体が上方位置にある状態を示す図。
【図3】図1の支持棒体及び第一リンク部材の長さ可変機構を示す図。
【図4】図1の状態を示す断面図。
【図5】図2の状態を示す断面図。
【図6】図1の体、円板及び停止板を説明する図。
【図7】本発明のリンク機構を説明する図。
【発明を実施するための形態】
[0016]
以下、実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の回転機構を備える発電機の実施例を示している。
この回転機構は、水50を貯めた水槽10と、水槽10内に気泡を供給する気泡供給管11と、気泡12の浮力で水中を上下動する錘体21と、体21に重なって上下動する錘体21の側部に一端が係止されて、錘体21から放射状に伸びる複数と、本の支持棒体31とを備えている。支持棒体31の他端は、水槽10の内壁に取付けられている。
[0017]
また、支持棒体31により、パラシュート状に拡がるシート部材32が支持されているシート部材32の中心孔の周縁は、錘体21の外周に固定されている。
また、水槽10の内部には、錘体21及び円板22の移動方向を規制する二本の支柱41が立設され、二本の支柱41の先端には、錘体21及び円板22の上昇位置を規制する停止板51が取付けられている。停止板51は、下方に向かって突出する停止棒511を備えている。
【0018】
図6に示すように、体21には、支柱41が挿通される挿通孔212と、気泡12の通過口213とが設けられている。
また、円板22には、支柱41の挿通孔222と、停止棒511の挿通孔223が設けられている。
【0019】
また、体21と円板22との間には、後述するように、両者を互いに引き寄せるスプリング23を介在させることが望ましい。錘体21のスプリング23に接する側、及び、円板22のスプリング23に接する側には、挿通孔212及び挿通孔223の周囲に、スプリング23の一部を埋め込む凹部214,224が形成されており、錘体21に円板22が重なる状態では、スプリング23は、これらの凹部214,224に収まり、錘体21と円板22とは接触した状態を保つことができる。
[0020]
また、図1に示すように、シート部材32を支持する各支持棒体31は、体21に係止された第一棒体部分311に対し、水槽10の内壁側に係止された第二棒体部分312が折れ曲がることが可能である。
また、第二棒体部分312は、図3に示すように、その長さを可変できる可変機構313を有している。図3(a)は、長さを短くした状態、(b)は、長くした状態を示している。
[0021]
また、図1に示すように、錘体21には、錘体21の上下する動きを水槽10の外部に伝える第一リンク部材61が係止されている。第一リンク部材61は、水槽10の水密孔13から水槽10の外部に導出されている。この第一リンク部材61の水密孔13通過位置が常に一定になるように、第一リンク部材61の水槽10内の部分には、可変機構313と同様の可変機構が設けられている。そのため、水槽10から突出する第一リンク部材61の長さは、第一リンク部材61の角度に関わらず一定であり、水槽10から突出する第一リンク部材61の端部は、錘体21の上下動に伴って、円の弧に沿って移動することになる。
[0022]
水槽10の外に導出されている気泡供給管11の管口部分からは、送風機等により空気が送り込まれ、それが気泡12となって水槽10内に放出される。
気泡供給管11から放出された気泡12は、図4に示すように、水中を上昇して、シー卜部材32の、“上に凸”の円錐状を成す中央部分に集まる。
[0023]
この中央部分に集まった気泡12の浮力が所定値を超えると、錘体21及び円板22は水中を上昇し始め、それに伴って、支持棒体31、シート部材32及び、第一リンク部材61の体21に係止されている側が引き上げられる。
【0024】
このとき、支持棒体31及び、第一リンク部材61の水槽10内の長さは、錘体21の上昇位置によって変わって来るが、支持棒体31及び第一リンク部材61は、可変機構33を備えているため、長さの変化に柔軟に対応することができる。
[0025]
図2は、体21及び円板22が、停止板51に規制される位置まで上昇した状態を示している。
このとき、図5に示すように、停止棒511の挿通孔を持たない錘体21は、停止棒511の先端が当接した状態で上昇を停止する。
[0026]
S一方、停止棒511の挿通孔223を有する円板22は、錘体21の気泡通過213を上昇した気泡12の浮力を受けて、停止板51に当接する位置まで上昇する。
そのため、体21の気泡通過口213を塞いでいた円板22が体21から離れて、気泡通過213が解放されるので、口213を通り過ぎて水面に逃げる。
気泡通過体21を押し上げていた気泡の全てが、そのため、気泡の浮力を失った錘体21及び円板22は、自重により水中を下降して、図1及び図4の状態に戻る。
[0027]
なお、このとき、図5図6に示すように、錘体21と円板22とが、それらを引き寄せるスプリング23で接続されていると、円板22が体21に素早く重なり、錘体21の気泡通過口213を閉じることができ、錘体21の反復動作の周期を短縮することができる。
[0028]
このように、この回転機構では、気泡供給管11から放出される気泡12により、錘体21が水中での上昇・下降の動作を繰り返す。
なお、気泡供給管11からの気泡12の放出は、連続的であっても、間欠的であっても良い。
[0029]
また、この回転機構では、図1、図2に示すように、シート部材32の外周縁近傍の部分に水の通過孔321を設けることが望ましい。
この水の通過口321が存在すると、錘体21の上下動に伴ってシート部材32が動くとき、水から受ける抵抗が少なくなり、円滑な動作が可能になる。
[0030]
図1、図2に示すように、錘体21に一端が接続された第一リンク部材61の水槽10から導出された端部には、第二リンク部材62の一端が接続され、第二リンク部材62の他端には、大径ギア64の回転軸に一端が固定された第3リンク部材63の他端が接続されている。
また、大径ギア64には小径ギア65が歯合し、この小径ギア65が発電機66の回転軸に固定されている[0031]
この構成において、先に説明したように、第一リンク部材61の水槽10の水密孔13から導出された部分の長さは一定である。
また、水密孔13の位置及び大径ギア64の中心位置は、それぞれ固定されているから水密孔13から大径ギア64の中心までの距離は、一定である。
そのため、水密孔13から大径ギア64の中心までの部分を第四リンク部材67と仮定すると、図7に示すように、第一リンク部材61の水槽10の水密孔13から導出された部分(=a)、第二リンク部材62(=b),第3リンク部材63(=c)及び第四リンク部材67(=d)は、四節リンク機構を構成している。
[0032]
この四節リンク機構では、dが固定節(固定されて動かないリンク)、aが原動節(機構に動力を与えるリンク)cが従動(機構の運動を外部に出力するリンク)、そしてbが中関節(原動節従動節間で運動の伝達・変換を行うリンク)として機能する。
四節リンク機構では、各リンクの長さを適宜設定することにより、原動節の揺動運動を従動節の回転運動に変換できることが知られている(例えば、株式会社キーエンス「イチから学ぶ機械要素」p86、参照)。
そのため、図7に示すように、四節リンク機構を用いて、第一リンク部材61(リンクa)の揺動運動を、第3リンク部材63(リンクc)の回転運動に変換することができ、大径ギア64を回転させることができる。
大径ギア64が回転すると、それに歯合する小径ギア65が回転し、発電機66が高速回転する。
[0033]
このように、本発明の発電機は、回転機構における揺動運動から変換された回転運動により回転されて発電を続ける。
【0034】
なお、ここでは、四節リンク機構により揺動運動を回転運動に変換する場合を説明したが、その他の機構を用いて回転運動への変換を行っても良い。
【0035】
また、ここでは、錘体21に一本の第一リンク部材61を接続して、一個の発電機66に発電を行わせる場合を説明したが、錘体21に複数本の第一リンク部材61を放射状に接続して、複数の発電機に同時に発電を行わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の回転機構を備える発電機は、各種産業分野において利用することができ、また教育現場において、学習用教材等としても利用することもできる。
【符号の?明】
【0037]
10 水槽
11 気泡供給管
12 気泡
13 水密孔
21 錘体
212 插通孔
213 気泡通過口
214 凹部
22 円板
222 支柱插通孔
223 停止棒通孔
224 凹部
23 スプリング
31
311 支持棒体 第一棒体部分
312 第二棒体部分
313 可変機構
32 シート部材
321 水の通過孔
41 支柱
50 水
51 停止板
511 停止棒
61 第一リンク部材
62 第二リンク部材
63 第3リンク部材
64 大径ギア
65 小径ギア
66 発電機
67 第四リンク部材
【要約】
【課題】
簡便な回転機構で回転する発電機を提供する。
【解決手段】回転機構は、水50を貯めた水槽10と水槽内に気泡12を供給する気泡供給管11と、気泡の浮力で水中を上下動する錘体21と、錘体に重なって上下動する円板22と、錘体から放射状に伸びる複数の支持棒体31と、支持棒体に支持された、パラシュート状のシート部材32と、錘体及び円板の上昇位置を規制する停止板51と、停上板から突出する停止棒511とを備える。シート部材32の下に気泡が溜まると、その浮力で錘体及び円板が上昇し、錘体は停止棒の先端が接触した時点で、円板は停止板に接触した時点でそれぞれ上昇が止まる。そのため、錘体に形成されている通過口から気泡が逃げる。気泡の浮力を失った錘体及び円板は元の状態に戻る。この錘体の反復動作が、リンク機構61,6263でギア64の回転に変換され、発電機66の回転軸が回転する。
【選択図】


バブル発電機
バブル発電機
バブル発電機
バブル発電機


(56)参考文献

特開昭57-126573(JP,A)
特開2001-153031(JP,A)
米国特許第10415541(US,B1)
独国特許発明第102021001268(DE,B3)


(58)調査した分野(Int.CL,DB名)

F03B 17/02
FO3G 7/00